【完】籠球ロマンティック
俺達の戦いに張り切りまくってるイツも、わざわざ仕事を休んで大きなワゴン車でこのコートにやって来ていた。


そのワゴン車は所謂イタ車であり、オルフェ仕様のイカしたデザイン。


「イツがバイクじゃないの珍しいな」


「お?そーりゃあれだ。愛しのリッコに頼まれて最高のステージに仕立てる為の道具がこのワゴン車にはあるからよ」


リッコに頼られたことが余程嬉しかったのか、イツは気持ち悪いくらいに緩んだ顔でヘラヘラしている。


「ありがとー、お兄ちゃん」


そんな妹溺愛の兄の使い方を良く分かっているリッコは、いつもは呼ばない『お兄ちゃん』という呼称でイツを呼びニッコリ笑う。


「レン、アップに行きましょ!」


「お……おう」


その『お兄ちゃん』で完全にデレデレになったイツを置き、コートの方へ歩いていくと、途端にリッコは『べぇ』と渋い顔をしてみせる。


「リッコ先生。主演女優賞です。名演技でした」


「あー、鳥肌ものだわ。まぁ、使えるものは気持ち悪くても使わなきゃね」


裏でこんなこと言われてるなんて、イツは知りもしないだろう。哀れすぎる。
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