奈落
「……帰る…?」
手首の止血具合を確かめるりょうたに、答えて欲しくない事を聞く。
「……ん……?」
正直に言うと、帰ってなんて欲しくない。
りょうたのシャツをギュッと握る。
……今日は偶然家族がいなかった。
今日はその日。
家の事情は大丈夫だから。
だから……
だから一人にしないで。
今日は。
今日だけは……。
「…俺も帰りたくなんかないよ…。
心配でゆなを一人になんて出来ない……」
頬を撫でてくれるりょうたが愛しくて愛しくて。
少しだけ……
笑えた──…。