イジワル上司に恋をして

頭の中で抑えきれなくて音にした言葉なのに、口に出したら出したで、自分がなんだか居た堪れなくて。

グイッと残りのミルクを喉に流し込むと、コンッと大きな音を立てて、折りたたみのテーブルの上にカップを置いた。
少し目を閉じて、気持ちを落ち着かせると、「よし」とまたもや独り言を言いながら立ち上がる。

家に一人で居たって、この件をずっと考えちゃうだけだし。
久々にどっか出掛けて、気晴らしに買い物でもしてこよう。

そうと決めたら、準備準備……。あ、なんか今度は冷たいものが飲みたい。

右手で、テーブルの上のカップを拾い上げると、そのままキッチンへと向かう。
一人暮らし向きな、小さめの冷蔵庫を開け、牛乳パックを取り出した。

そのままカップに注ごうとする。

……あ。もうあんまり入ってないや。

パックを思い切り傾けて軽く振る。ぽたぽたっと雫がカップに吸い込まれていき、僅かな量の牛乳に波紋を作る。

ああ、アレ、なんていうんだっけ。

……そう。ミルククラウンだ。
一滴落として、それから王冠状の形状が現れる……ってやつ。ネットとかテレビとかの写真でしか知らないけど。
確か、肉眼じゃ見られないくらい、一瞬のものだ……って、なにかで見た気がする。

〝ミルククラウン〟……か。なんか、響きが好きだな。


「さて、と」


ほんの少しの牛乳を飲み干して、早々に出掛ける準備をする。青天の元、わたしは歩き出した。
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