イジワル上司に恋をして
「ああ。妬いてるよ」


パタン、とロッカーを閉めて、ショップに向かう前にもう一度携帯を確認する。
今朝、出勤途中に来たメールだ。


【おはよう。昨日も仕事後だったのにごめんね。ちゃんと起きれた? おれは今、猛ダッシュ後の電車(笑)……昨日、うれしくて寝れなかったから。
じゃあ、今日も頑張って。もしかしたら、夕方頃ちょっと寄れるかも。いい?】


……こんなメール、恥ずかしくてどんな顔していいのかわかんないよ。
【うれしくて寝られなかったから】って。わたしなんか相手に、本当にそんなふうに思ってくれてたのかな? ……でも。いくら優しい西嶋さんだからって、そこまでのお世辞なんて言わない……と、思うし。

少し盛って言ってくれてるとしても、それでもちょっとはほんとに思ってくれてるってことでいいんだよね……?

なんだか恥ずかしすぎて直視出来ない受信メール画面を、すぐに返信ボタンで切り替えると、今度は返事に頭を抱える。


【おはようございます。朝から猛ダッシュ、お疲れ様です。わたしはなんとか起きて今、ショップに降りるところです。夕方、こちらは大丈夫です】


……うーん。よそよそしすぎ? でも、これ以上なにも付け加えたりも出来ない……。
時間もないし、ヘンではないだろうし……これでいっちゃえ!


エレベーターの中で自分のメールを何度も読み直して、結局自信はないものの、ショップが目の前に近づいてきたので送信してしまった。

【送信しました】という文字を確認して、携帯をポケットに突っ込んだ。

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