イジワル上司に恋をして


――ああ。仕事に行きたくない。


こんなふうに思ったのなんて、今の職場で初めてかもしんない。


「……わたしの平穏な日々が」


3度目の寝がえりのあとに、ひとりぼやいた。


昨日の夜。もちろん、二次会はパス。

その帰宅途中から、眠る直前まで、『あれは夢だ。アイツは幻だ。きっと、妄想し過ぎた脳が生み出した幻影だ』と、言い聞かせていた。



けど、どうなんだろう。


一夜明けた今ですら、掴まれた手の感触と。その指に触れられた唇が、拭い去ったはずなのに、まだあの感覚が残ってる。


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