イジワル上司に恋をして

お兄さんがいたからつきあえない……。でも、きっと関係は持ってしまった……?

こんなときに、妄想力がフルで活用出来るなんて。
勝手に黒川に感情移入するように、自分の中で妄想が膨らんでいく。


自分は好きなのに。それを一度でも受け入れられてしまったら、もうその想いに止める術はなくて。
けれど、その人の相手は自分と血の繋がった兄。
兄弟間はどんな関係かは知らないけど、もしも慕ってるような兄だったなら……。

香澄さんのことは好きだけど、お兄さんのことも大切で。
裏切ることなんかできないって思ってても、その心とは裏腹に彼女を求めてしまって。

行き場のない想いは、どうやって終焉を迎えたんだろう。
まだ若いときのことだといえども、若くたって苦しい思いをするはずだ。

じゃあ……じゃあ。
黒川は、その当時。香澄さんを諦めて、お兄さんに嘘をついていたってことかもしれない。


感情移入して、あたかも自分がそうであるようになってしまうのはいつものこと。
だから、つい……。


「な――――?!」


黒川のこんなに驚く顔なんてみたことない。
なにをそんなに大きな目でこっちを見てんの……あれ?


そう思ってたら、すーっと頬が濡れたのがわかった。


「え? あ、あれ?!」


な、なに、これ。

< 237 / 372 >

この作品をシェア

pagetop