イジワル上司に恋をして
西嶋さんには、誠心誠意を込めて、謝ろう。
『いまさら気付いて、自分勝手だ』って罵られても仕方がない。そうなったら黙って受け止めよう。
でも、問題はそれだけじゃない。
わたしのこの気持ちが、このまま本当に恋心になっていくのだろうかと、自分で自分に自信がない。
けど、確かに気になるのは事実で……。
電気ポットの小さな窓からぐつぐつと沸騰しかけてるお湯をなんとなく眺めながら思考は続く。
仮に……仮に、よ?!
もし、その……ホントにアイツに男を意識しちゃったとして。それで、わたしなんかがどうにか出来る相手じゃないでしょ!
あんな扱いづらい性格に、無駄にスタイルや顔がイイ上司。
アイツの隣にいる自分とか、まるで想像出来ないんだけど。
それに、ああいう男って、好みのタイプとかうるさそうだし。理想が高いっていうか。
だって、あの香耶さんですら2度も玉砕したわけで。
と、なると……。
カチッと、電気ポットが湧いてスイッチが切れた音にも目もくれず、カップを握ったまま頭に浮かんだ。
……吉原、香澄さん。
彼女のような、少しきつそうな中身でも、しっかりして綺麗な人がいのかもしれない。
現に、過去とは言え、吉原さんを好きだったんだし。
……人って、そんなに〝好みのタイプ〟って変わるかな?
根本的なところって、変わらない気がするんだけど……。
だとしたら、アイツが香耶さんに言ってた「気になるヤツ」って、吉原さん?
お湯を入れないまま、コトッとカップを置いて顔を上げた。