もしも君と恋ができたら


引き出しの奥から、一枚の写真を取り出す。


少し色あせたその写真には、二人の幼いこどもが仲良く手をつないで笑っている。


二つ結びの女の子がわたしで、やんちゃに笑っているのが3つ年上のしょうくん。


本当は省吾という名前だけど、わたしは小さい頃から彼をしょうくんと呼んでいる。



しょうくんはわたしの家の隣に住んでいて、ものごころついたときからいつも一緒に遊んでいた。

かくれんぼしたり、お絵かきをしたり。


わたしがしっている限りの遊びという遊びはすべて彼が教えてくれたようなものだ。



いつも一緒だった。

いつも一緒に笑い合っていた。



それなのに、しょうくんがわたしに触れなくなったのはいつからだろう……



無意識に、胸の辺りまで伸びた髪に指先で触れていた。


この髪はわたしの自慢だ。


『あかりの髪、きれいだよな』


小学校の遠足のときに、風に靡いたわたしの髪を見たしょうくんがぽつりとこぼしたあの日から、わたしは髪のお手入れを怠ったことはない。


しょうくんがこの髪に触れてくれるときが一番の幸せだったのに、しょうくんが高校にあがった頃には会話すらあまりしなくなったように思う。


何年もまともに話していないのに、


明日……



しょうくんに、会うんだ。



そう思うとまた心臓が騒ぎだすのを感じ、写真を机の上にあったお気に入りの本に挟んでダンボールに入れ、荷物整理を再開した。



だめ、だめ。



こんな風に意識してたら、しょうくんのことが好きだってばれちゃうよ……







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