ぎゅってね?
「………マジで、ありえない」

私は大学の図書館で爆睡している玲人を見つけて小さくつぶやいた。
玲人の呼び出しはいつも突然だ。
それこそ人の都合なんてお構いなし。
まぁ、都合をつけてのこのこやってくる私も悪いんだけど。

「人のこと呼び出して寝てるってどういうことよ?」

よくもまぁ堂々と公共の場で爆睡できるものだと呆れを通り越して感心すらしてしまいそうになる。

一応今は試験前なので図書館はそこそこ込み合っている。
そんな貴重な学習スペースを陣取って昼寝とは本当にいいご身分だ。
玲人は昔からどこでも眠れるやつだったけど、この爆睡具合から察するにたぶんさっきの講義はサボったに違いない。

「れーい、起きな?」

一応周りに気を使って小さな声で起こしてみるが起きる気配がない。

「まったく、しょうがないんだから」

私は軽くため息をつく。
仕方なく私は玲人の隣に腰かけ、そのまま玲人をじっと観察する。

サラサラの髪、
整った顔立ち、
ちょっと吊り上り気味のネコ目は今は閉じられていて眠っている表情はあどけなくて幼く見える。

玲人とは小学校からの付き合いだから、私の人生の大半は彼と過ごしたことになる。

そのまま私は視線を落としていく。
そして私は玲人の指さきで視線を止める。

長く細いきれいな指。

男の人にしては繊細な指だと思う。

最後に玲人と手をつないだのは、私たちがまだ無邪気にはしゃげるくらい子供だったときだった。

あれからいくつも時を重ねてしまって。

気づけば大人になっていて。

私たちは手を繋がなくなっていた。

その指先を見ながら思う。

何人の女の子が、彼の手に触れたんだろう?

何人の女の子が、彼と手をつなぐことを許し合ったんだろう?

今は、この手は誰のためにあるんだろう?

それが私じゃないことが分かっていて、すごく泣きたい気持ちになった。
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