センセイの白衣
だけど、だけどその日の帰り。

お母さんは言ったね。



「あんた、先生にあんなこと言っちゃだめじゃない。」


「だって……、」


「そんなにS大に行きたいなら、行けばいいでしょ?先生にあんなふうに言わなくてもいいじゃん。」


「え、……いいの?S大に行っていいの?」


「仕方ないじゃん、そんなに行きたいなら。」


「ほんとっ?ねえ、ほんと?」



それ以上何も言ってくれなかった母。

だけど、私はそれだけで十分だった。

S大に行っていいと、母に言われただけで。


もちろん、入試を突破しなくてはいけないことは分かっている。

地元のN大と同じ国立で、S大の方がずっと難しい、ってことも。

だけど、そんなことは問題じゃなかった。

自分が頑張りさえすれば、どうにかなることなのだから。



その日から、私は今までよりもずっと、一生懸命勉強するようになったんだ。

二次試験には数学のテストもあるS大。

だから、本当に一生懸命頑張った。

絶対、絶対にS大に行ってやるんだって、私は燃えたんだ―――
< 101 / 144 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop