センセイの白衣

視力検査

「2年5組の女子の番です。」



前のクラスの保健委員が声を掛けに来て、私のクラスの女子も一斉に廊下に出て行く。

毎年、春にある身体検査。

なんだかちょっと憂鬱だった。


ぞろぞろと並んで、剣道場を目指す。

可笑しいんだ。

うちの学校は、保健室じゃなくて、こういう測定の類は剣道場で行う。

ちなみに、その隣に隣接している卓球場で、視力測定だ。

なんだか笑ってしまう。


流れ作業のように、体重、身長、座高を測って。

「身長縮んだ!!」とか言い合ってはしゃぐ。

いつものこと。


そして、最後に視力測定だった。


視力を測る装置は、卓球場の3か所にあって。

それぞれ、担当の先生がいた。

どこに並んでもいいらしい。


その3人の一人が、川上先生だと知って、私は思わずどきっとした。



いつも通り白衣を着ている先生。

だけど、今日は授業じゃなくて視力検査だから。

なんだか、お医者さんみたいだ。


その姿を見ていると、なんだかくすぐったいような、嬉しいような気持ちになった。

いつまでも、いつまでも先生を見ていたいと。

そんな気持ちが沸き起こってきて。


だけど、私は先生の列に並ばなかった。

どうしてだろう。

並びたかったけれど、並ばなかった。

先生と近くで相対したら、それも視力を測ってもらうなんてことしたら―――


平常心でいられなくなりそうで。
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