センセイの白衣
本当は、もっといろいろあったんだ。

その日は、一日中ガミガミと怒られ続けた。


耳を塞いでも、入ってくる言葉たち。

それは暴力みたいに、私の心を粉々にして。


何を言われたのか、はっきり覚えていないのは、多分私の心が防御反応を起こしたからじゃないかな。

あの頃のこと、あまりにショックで、ぼんやりとしか思い出せない―――



ただ、ひとつ覚えているのは。


あまりにも苦しいと、涙も出ないってこと。


涙よりも、息が苦しくなって。


部屋に残された酸素が、残り少ないような気がして。


必死に、必死に息をしていた。


打ち上げられた、サカナみたいに。
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