センセイの白衣

ひどい

そんな中、二者懇談があった。

こうなったら、もう担任と話すのなんてどうでもいい。

国立とはいえ、N大だったら余裕だ。

もう、どうでもよかった。


久しぶりに、担任と向き合う。

すでに、進路希望調査のプリントは提出していたので、担任も進路を変えたことは分かっているはずだった。


それなのに。


担任は、まるで、今気付いたみたいに。

すごく嫌な言い方をしたんだった。



「あれー?晴子さん、もしかして、進路変えたんですか?」



背中がうすら寒くなるような笑みを浮かべながら。

どうして、どうしてそんなふうに言えるんだろう。

私の痛みを、この人はちょっとでも分かってるんだろうか。



「はい。」


「それはまた急ですね。」


「母に、他県にはやれないと言われました。」


「そうですかー。晴子は、それでいいの?」



いいわけない。

いいわけないじゃん。

そんなことも分からないの?


あの三者懇談のとき、私が泣きながら伝えたかったこと。

やっぱり、ちっとも伝わってなかったの?



「……いいです。」


「ほんとですか?」


「仕方ないんです。」



だけど私はもう、担任に腹を立てたって仕方がなかった。

もう何をしても、私はS大には行けない。

それは、分かりきっていることだから。



「晴子の成績だと、まあN大は落ちないでしょうね。」



それも、分かりきっていること。



「併願は?」


「しません。」



するわけない。

例え、東京の有名私立大学を受けて、受かったとしても。

行かせてはもらえないんだから―――


その頃の私は、笑わなかった。

というか、笑えなかった。


作り笑いをしようとしても、引きつったようになってしまって。

だから、担任に余裕の笑みを見せようと思っても、できなかった。


さすがの担任も、それ以上私を追及することはなく。

呆気なく2者懇談は終わってしまった。


分かっていた。


担任が守ってくれるはずはないんだと。


だけど、何だかすごく悲しかった。
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