センセイの白衣
第5章 このままでいたい

ちょっとだけ特別?

その日の授業は、楽しかった。

葉脈標本を作っていたんだ。


薬品に漬けて煮た後の葉を、歯ブラシでこする。



「お前、優しすぎるぞ、こするのが。もっと強くやっていい。」



隣で、亜希子が激しくこすりはじめる。

すると、案の定びりっと葉は破れて……。



「あーもう!先生が強くやれとか言うからー!!!」



怒る亜希子に、川上先生は呆れた目を向ける。



「今のは横内に言ったんだ。」



あ、その一言。

きゅんとする川上語録の中に加えておこう。



「先生ー、最近しょっちゅう金縛りに遭うんですよ。うち、オバケでもいるのかな。」



何となく先生にそんなことを言ってみたら。


ふと真面目な表情になった先生は、つぶやくように言った。



「それは……精神的なものじゃないか?」



あ、と思った。

これは失言だ。

先生が、思い出したくないことを思い出させてしまったかも……。



だけど、その後も先生は変わらなかった。

だから、ちょっと安心した。

先生は、過去を過去にできてるんだなって、そう思ったから。
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