指先に願いを




『ごめん、この本返却してもらってもいい?』

『…?…私今休憩中なんですけど』

『うん、寝てるからそうなんだろうけど。受付の人みんな忙しそうでさ、俺ちょっと時間なくて』





休憩時間に寝るのを妨害された、そのことに露骨に嫌な顔をしてみせた私にも彼は至って普通に笑って





『そんな怖い顔するなって。頼むな』





そう言って、そっと頭を撫でた。宥めるような仕草に、なんて馴れ馴れしい人なんだろうと思った。

おまけにそれ以来毎日のように昼休みには私の寝ている職員休憩室にやって来て、あれこれ構ってくるものだからその存在が嫌でも日常に入り込んでくる。





『有村はいつも寝てるのな。そんなに眠いのか?』

『はい。…昨日もつい夜遅くまでネットゲームしちゃいまして』

『ネトゲ?この現代っ子め!』





そんな風にして些細な時間を毎日を重ねるうちに、次第に惹かれていっていた。

かけてくれる一言が嬉しくて、気付いたら好きになっていたんだ。





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