ツンデレ社長と小心者のあたしと……2


パンフレットから視線を外し、パソコンのモニターを見つめると、電源の入っていないモニターに反射して、あたしの顔が映る。


少し垂れ目な瞳を乗せた顔は、もう少し太りたいのだけどなかなかうまくいかない。


お腹はへこませたいけれど、手足や顔はもう少し女性らしく丸みがあってもいい。


なんて、理想はつきないもの。


まあ、容姿については、願ったから叶うものでもないし……、と早々にメールのチェックを始める。今日もやることがたくさんだ。


左隣に座っている佐々山くんは新しいアプリの開発に唸っている。

今日は一日外出らしい右隣の歌子は、社長のメディア戦略に関する全般へ携わるキャリアウーマンだ。


そんな中、あたしがなにをしているのかと言われると、これがまた難しい。


「思いついたことはまず、全部実行してみる」

と言うスタンスの社長なので、そもそも会社の向かっている先が何なのかという部分ですら明確では無い。


社長曰く、


「やりたい事をやって、それをどう評価されるか。大切なのはそれだけ」


そんな風なので、会社のHPの事業内容一覧の項目の多い事と言ったらない。


そのたくさんの事業の中で、どうしても人の手が足りない部分が出てくることがある。


それを補うのが今のあたしの仕事、という位置付けなんだと思う。


お茶汲みやコピー取りはしないけれど、いわばこの会社にとっての雑用係と言えなくも無い。


例のワインについての編集が終わったら次は幻の生物について調べ、指定された裁判の傍聴に行く……。

我ながら、こんなシフトを組んでいるOLはそうそういないだろう。


そうそう、その合間合間で、新しく開発した文字入力ソフトのテストもあるんだった。


一つ一つやるしかない、とまずは原稿作成の為にペンをノートに走らせていると、不意に社内にあるテレビの電源が入る。

そしてそこへ、生放送でトーク番組に出演している社長の姿が映った。

誰かが時間を覚えていたのだろう。
社員のほとんどが手を止め、社長の話に聞き入り始める。


画面の中では社長が飄々と、普段通りのままで楽しそうに話していた。


社内では適当に見えるけれど、年下だったとしても仕事相手には必ず敬語で話す社長。


今も若手芸人に対し、腰を低くして持論を語っているようで、その姿にまた惹きつけられる。


あの手とあの唇が数日前にはすぐ隣にあったなんて……。

残された証拠があるにもかかわらず、存在が大き過ぎて実感する事が難しい。


< 3 / 8 >

この作品をシェア

pagetop