その指先も仕草もすべて
付き合って初めてのデートをすっぽかして。
振られるだろうな。
ひとりで苦笑いを浮かべながら、彼女の微笑む顔を思い出して胸が苦しくなった。
帰ろう。
そう思ってため息をついたとき、後ろから肩を叩かれた。
「ショウくん」
名前を呼ばれてドキリとする。
振り返ると、いないはずの彼女がそこに立っていた。
幻覚……
茫然としていると、彼女が挿していたビニル傘を俺の上に翳して首をかしげる。
「大丈夫?頭と肩、雪積もってる」
背伸びをした彼女が、傘を持っていない方の手で俺の頭と肩に触れてそこに積もった雪を払う。
それから最後に、手のひらで包み込むように俺の頬に触れた。
「寒かったでしょ。ほっぺた、すごく冷えてる」
俺を見上げてはにかむように微笑む彼女。
俺の頬よりも、そこに触れる彼女の指先のほうがずっとずっと冷えていた。