Sweet*Princess



「暴力は好かないねぇ…」


この状況を、史兄は楽しんでいる。


……ムカつく



「てめぇに何がわかんだよ」


俺と咲華さんのことも


俺の気持ちも


史兄にわかるはずがない。




「今度会う時、お前も来ていいぜ?ヤらせてやるよ、お前にも」


「ざけんなよ!!」


「ふざけてんのはお前だろ?姫乃が好きっつっといて、咲華のことも気にして。結局、姫乃のこと裏切ってんじゃん」


「うっせーんだよ!!!」



俺は、思い切り史兄の右頬を殴った。


その衝撃で、史兄はドスンと倒れた。



「いってーな……だから、暴力は嫌いだっつってんだろ……」



史兄の瞳には先ほどの嘲笑はなく


背筋が凍るほどの冷たさがある。



俺は、座り込む史兄の胸ぐらをもう一度掴んだ。



「俺は………史兄とは違う」


「…んだと?」


「昔の女にいつまでも執着しねーよ」


次の瞬間、今度は俺の右頬に強い衝撃。


口の中で血の味がする。



「暴力は嫌いなんじゃなかったっけ?」


挑発的な瞳で史兄を見る。


史兄はゆっくり立ち上がり、俺の胸ぐらを掴んだ。



「次その話したら弟のお前でも容赦しねぇ。………殺すぞ」



史兄は俺を離すと


帰れと一言呟いた。



そして、それから俺を見ることは一度もなかった。



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