Sweet*Princess



家に帰って、向かう場所はもちろん壱斗の部屋。


長い廊下を通って、見慣れたドアの前に立つと


中から女の声が聞こえた。



ガチャッと、わざと音を立てて中に入ると


壱斗はベッドに腰かけていて、目だけ俺のほうに向けた。



その隣に座るのは知らない女で


近くに立っているのは見慣れた女………今井咲華だ。



「もしかして、壱斗さんのお兄様?」


お兄様も素敵なのね……どうでもいいっつの。


黙れ



「雅、こちらは壱斗の婚約者の桐生美和さん。あなたの義妹になる人よ」


義妹?


だからどうでもいいっつってんだろ。



てか、桐生美和?


あぁ、涼子さんをのけ者にしてた娘ね。



壱斗、ソイツは性格ブスだぞ。


やめとけ。



なぁ、壱斗


「なんとか言えよ、黙ってねーでよぉ……!」


壱斗の服を掴んで無理矢理立たせる。


でも壱斗は俺の目を見ようとはせず、なにも話そうとしない。



「壱斗さんに何するんですか?!」


隣に座っていた女が立って、俺の腕を掴む。



「関係ねーだろ、テメーは黙ってろ」



そう言うと、その女は涙目になって壱斗を見た。



「雅兄、美和さんに謝れ」


……は?


やっと口開いたと思ったら、ソイツを庇う言葉?



……ふざけんな。



「姫乃は泣いてんだぞ?」


お前の、世界一大事な女が


お前のせいで



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