Sweet*Princess

3*つり合わない


「あ!壱斗じゃん!」


壱斗と手を繋いで歩いてると、騒がしい女の人の声が聞こえた。



「え、あぁ……」


壱斗は少し顔を歪ませた。


それに気付かない3人組の女の人は、私がいない方の腕をベタベタ触っている。



「ねぇ、壱斗!私達と一緒に遊ぼうよ!」


「そうだよ!壱斗がいたら絶対楽しいもん」



すごく勝手なことを言う女の人達に、壱斗の顔がまた歪んでいく。


ねぇ、なんで気付かないの?






「壱斗、嫌がってます」


いきなり口を開いた私に、女の人達はキッと睨みをきかせた。


壱斗は驚いた顔してこっち見てる。



「壱斗が嫌がってるの、見ててわからないんですか?」


「何、あんた。壱斗優しいもん。嫌がるわけないじゃん。」


「てゆーか、あんたがいんのが嫌なんじゃん?」



……は?



「お前ら、何言って…」


「“婚約者”とか言われて調子乗ってんじゃねーよ。」


「てかさ、鏡見てわかんない?あんたと壱斗、つりあってないよ」







“つりあってない”?



そんなこと、前から知ってるよ。



なんで、あんたに言われなきゃなんないの。




「ごめ、壱斗。ちょっとトイレ行ってくる」



「え?あ、姫乃!」



壱斗の声を無視して、走りだす。



だって、涙出そうなんだもん。



てゆーか、もう出ちゃってる。



私、惨めだなぁ…



.
< 54 / 231 >

この作品をシェア

pagetop