私は男を見る目がないらしい。
 

「……嬉しかった」

「……何が?」

「高校の時に別れた時、本当に落ち込んでくれてたって聞けて」

「!はぁ。やっぱりそこかよ……。スルーしていいのに。っていうか、言っただろ?フラれてヘコんで痩せたって」

「聞いたけど、改めて聞いたらやっぱり嬉しいって思ったから」

「自分からすれば、情けねぇだけだけどな」


むぅと唇を尖らせていじけるような表情を浮かべる。

本人は「情けない」なんて言うけど、私にとってはすごくすごく嬉しいことだ。

胸がきゅっと甘く掴まれた感覚がして、ちょっと苦しい。

けど、幸せ。


「……でも、朔太郎のそういうところ、好きだよ」

「!!」

「ふふっ。よーし、行こー!」

「わっ」


仕返しをして満足した私は朔太郎の腕を引いて、足取り軽く歩き出す。

朔太郎はすごく悔しそうに、でも嬉しそうに、ぶつぶつと何かを言っていた。



……何を言っていたかは、夜知ることになるけど、この時の私には知るよしもなかった。

仕返しをしたことを、すごく後悔したのは言うまでもない……。

 
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