駅のホームとインディゴブルー
結局今日はいつも通りの電車に乗った。

多分またすれ違うから、会釈でもすればいいんじゃないかなと思って。

彼が昨日のことを不愉快に思っているならわたしのことを避けるだろうから、そしたらそれで仕方ない。

わたしは変なところでめんどくさがりだと、たまに言われることがあるけど、自分でもそう思う。

暗い闇の中を、光を宿した列車がスピードを持って走っていく。

まるで宇宙に浮いているみたいだなと思った。

ぼんやりとマフラーを巻く彼の姿が目に浮かぶ。

やっぱりどこかで会いたいと思ってる。



そりゃそうだ。

頭の中で反芻するその言葉とは裏腹に、急に何かが抜き取られたような欠落感を認めざるを得なかった。

結論から言うと、彼は今日もいた。

そしてその隣に女子高生がいた。

背が小さくて、胸まである髪をふわっと巻いていて、目がきらきらしてて、彼の腕を両手でゆさゆさと揺さぶっている。

ドアが開いて、わたしは瞬時に見てはいけないと思ってしまった。

「…でさ、あの映画の続編来月やるんだよー」

ちょっと鼻にかかった、甘くてかわいい声。

「えっと…」

「見に行きたいなー!」

彼女の方が夢中で喋っているような雰囲気だった。

自然とうつむいて、一歩。

心なしか脚が重い気がする。

わたしが降りて、彼、彼女、わたしが横並びで一直線になるちょっと手前、彼女が「あれっ」と声を出した。

明らかにわたしに向けられた疑問の声。

一瞬、ぐっと奥歯をかみしめた。

「同じマフラーしてるね、あの人」

ちょっと声を落としてるつもりかもしれないけど、聞こえてるよ。

「あぁ、うん…」

戸惑っている彼の声も。

聞きたくないのに。
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