恋物語。




―時刻はお昼すぎ。


今日はどこにも行かず、まったりお家ですごしている。

もうすぐ新年度っていうことで、ここ最近の聡さんの仕事が忙しかったから。
時には…休日出勤までしていた日だってあったぐらい…―。




「はぁ…何か久々にゆっくりできてる気がする。」


ソファに座り伸びをした聡さんがそう言う。



「聡さん…ずっと忙しかったですもんね。」


その隣に座った私はそう返した。



「うんまぁそうだけど…って。本当にそれ好きだね?」



「ぇ…」


私の方に振り向いた聡さんはそう言った。
その視線の先には…膝の上で抱えた“うさっち”のぬいぐるみ。



「だって聡さんがいない時……ずっとこうやってたんだもん…」


私は俯きながら言葉を発する。




この子は…誕生日に聡さんがくれたプレゼント。

だから聡さんが休日出勤の時は…ずっとこの子が聡さんの身代わりだった。
聡さんの匂いのするこの部屋で一人だなんて…孤独感に襲われるんだもん…。




「……寂しかったんだ?」



「うん…」


ギュッと“うさっち”を抱き締める。



「ごめんな…?寂しい思いさせて…」


聡さんはそう言いながら…私のことを抱き締めた。



「けどもう少ししたら落ち着くと思うから…そしたら…本格的に新居を探そう。」



「うん…」




聡さんは…いつでも優しい。それは今でも…全然変わらない。
それに…私を甘やかしてくれるのも…聡さんだけ―…。




「……好き…っ」


小さく呟いて…彼に抱きついた。



「何…?もう一回言って?」



「……言いません…」




だって…絶対、聞こえてたもん…。これは…聡さんの意地悪なんだから…。




「何でよ…?ただ“好き”って言うだけなのに?」





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