恋物語。




ちなみに…私も結婚を機に会社を寿退社した。

それは自分自身、どう頑張っても…仕事と家事の両立なんて出来そうにはないと思ったから。
聡さんにも相談したけど…“知沙がそう決めたなら、俺は反対しない。”そう言ってくれた。




「で。その朱里ちゃんと会うの…夜までには終わる?」


聡さんは朝食を食べ終えたようで最後にカフェオレを飲み干した。



「うん、夕方には終わるけど…何で?」



「ん…?夜、二人でご飯食べに行きたいなって。俺今日、早く終わる日だから。」



「えっ…!?ほんと!?嬉しいっ!行きたいっ!!」


その提案に私は心の底から嬉しい気持ちでいっぱいになった。



今の聡さんは前よりも数多くの企画を任されるようになっていた。

それにこの時期から新年度に向けての仕事が増えてくる…らしい。
だから当然、残業は増えるし二人で過ごす時間も少なくなって…。




「じゃあ決まり。仕事が終わる頃、連絡するね?」



「うんっ!」


私は満面の笑みで頷き、最後に少し残したカフェオレを飲んだ。



「知沙…ほんとに嬉しそう。そんなに俺のことが好き?」



「え…っ!?」


優しい目で私を見つめている聡さん。
突然の質問に持っているカップを落としそうになった。



「ねぇ、どうなの…?好き…?」



「っ…」


グッと私の方に身を乗り出してくる聡さん。
その真剣な瞳に…吸い込まれそうになる。




そ、そんなの…言わなくても分かってるくせに…。




「……好き…っ」


心ではそう思うのに、口が勝手に開いて言葉を発していた。



「ふふっ…俺も。」




ちゅ…っ




「っ…!」


少し口角を上げた彼は私のおでこにキスを落とす。



「じゃあ俺、もう出ないと…」



「あっ…!もう、そんな時間…?」


さっと出かける準備をして出て行く彼を私は玄関まで見送る。



「…行ってきます。」



「行ってらっしゃい。」


そして彼は…私の唇に口づけをして家を出て行った。




“夫婦”としては…まだ始まったばかりの私たち。
これからもずっと、仲良しでいられますように―…。




【END】



< 146 / 148 >

この作品をシェア

pagetop