恋物語。



―10月。


ある日のお昼休み。
私は今日、早川さんと持参したお弁当を食べていた。




「そういえば……先輩は元気?」



「え、先輩って…?」


早川さんが私にそう聞いてきた。



「…井上さん。坂井さんの彼氏なんでしょ?」



「あ、はい…っ」




そ、そっか…。聡さんのことか…。
確か二人は…大学時代の先輩と後輩だったんだっけ…?




「…元気ですよ?それがどうしたんですか?」



「ん…?上手くいってるのかなぁ…って、ちょっと思って。」



「はい…大丈夫です…」



「そう。」




何で早川さんは…こんなことを聞くんだろう…?
聡さんの良くない過去を何か知っているとか…?




「…あ、そうだ。これは聞いてるのかな…?」


そう思っていた時、早川さんが口を開いた―。




「何ですか…?」



「私と先輩が……昔、付き合っていたこと。」



「え…!?」


早川さんから聞かされた事実は初耳で…どう反応していいのか分からず、ただ驚いた。



「あれ…?その様子じゃ聞いてないみたいね。まぁ…もう何年も前の話だけどね…?
だから、この前…偶然にも再会して驚いたわ。それに…坂井さんまでいるんだもの。」



「……」




それは…きっとビックリするよね…?
私は、そんな経験なんてないから…想像しかできないけれど。




「それで、あのあと……かなり久々に連絡を取って…二人で会ったの。」



「え…」




そんな話、聞いてない…。ほんとに…!?




「そのあとは……朝まで共にすごしたの。この意味…先輩の彼女である、あなたになら分かるでしょ?」



「っ…」


私は何も言えず、下唇を噛み締める。



「あの人はそういう人なの。あなたじゃなくって…数年振りに再会して、やっぱり私の方がいいって思ったのよ。」


早川さんは強い目で私にそう言ってのけた。




聡さん…嘘でしょ…?私を裏切ったりなんかしないよね…?


私は聡さんを信じたいけど…先輩である、早川さんのことも信じてるの…っ
でも、そうなると…どっちかが“嘘”をついてるってことになってしまう…。



私は一体……どちらを信じればいいの――…?





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