キミの理想
「私の手は、今は優のもの。けれどね、子どもが出来たら子どものものになって、孫が出来たら孫のものになるの。そして孫が大きくなった頃、私の手は寂しくなるの。そしたら、また私の手は優のもので、優の手は私のものにするの。苦労もするだろうし、歳も重ねるから、その時にはカサカサで、しみもたくさんあって、血管なんか浮き出ちゃってさ、そしてしわしわなの。お互いにそんな手でも、頑張ったねって優と繋いで、笑いあっていたいの。そこからまた2人の時間をスタートさせるの。そんな人生を送りたいなって、それが叶ったら絶対に幸せだよね」


ベッドの中でもぞもぞと動いたと思うと、俺の手に温かいものが触れた。もちろん、愛しい彼女の掌。


「……温かいね」


彼女はそう言って、本当に嬉しそうに笑った。


俺だって、その気持ちちゃんと分かる。どんなに歳をとっても、どんな姿になってもキミと笑いあっていけたらって思っているから。


けれど、今の彼女に言葉で言っても、きっと伝わらないだろう。だから、俺もだよって想いを込めて、俺に触れる手をしっかりと捕まえて、そして指と指を絡めるように、離れないように、ぎゅっと固く繋いだ。


……本当に、温かくて、安心する。


「離さない、で、ね」


そう言うと彼女は今度こそ、スースーと静かに寝息をたて始めた。


安心しきった顔で、幸せそうに微笑んだままの表情で眠っている彼女を見ると、俺でいいんだなって安堵する。そして、俺にも彼女しかいないんだという想いがまた一段と強くなる。


「……離さないからな。おやすみ、亜美」


彼女の耳元でそっと囁いた。聞こえていなくてもいい、俺が伝えたいだけだから。


あー、俺も眠くなってきた。彼女の存在そのものが俺に安らぎを与えてくれるからかもしれない。抗えないくらいの睡魔が襲ってくる。


手は繋いだまま、彼女の存在を、幸せを感じたまま、俺も瞼を閉じた。


今夜は、いい夢を見れそうだ。




『キミの理想』Fin.
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