好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―

……あれ、結局どうしたんだっけ。

瀬戸、何か言ってたっけ。

……ううん、笑ってた。

何も答えないあたしを見て……少し寂しそうに笑ってた。


「………瀬戸」


何気なく、名前を呟く。

呼んだって返事が返ってくるわけではないのに。


「………………」


外、出ようかな。

何かこのまま部屋にいたらおかしくなる気がする。

そう思ってベッドから起き上がった……その時。


「……電話?」


あたしがちょっと前に新しく設定し直したばかりと着信音が鳴り響く。

電話なんて珍しい、と思いつつ手に取って画面に表示された名前を見る。


「……………え」


………何で。

いや、確かに名前は呼んだけど。

呼んだけれども……。


まさかの人物からの電話にあたしは驚きを隠せない。


それでも鳴り響く着信音、


あたしは通話ボタンを押して、恐る恐る声を発する。


「もしもし……?」

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