STORMILY
でも、何だかんだ言ってその時は私自身も胸中複雑で、とても動揺していて、人の気持ちを思いやっている余裕などなかった。


相手の女性に新しい命が宿った事を告げたその瞬間、能面のように色と表情を無くしたお母さんの顔は、今でも脳裏に焼き付いている。


それからお母さんはみるみるうちに覇気がなくなって行った。


もともと元気はつらつというタイプではなかったけれど、多少なりともあった私との対話の時間は徐々に減り、休みの日などはダイニングテーブルに腰かけ、ぼんやりと過ごす事が多くなった。


職場でもうっかりミスを連発するようになったらしく「ベテランのパートさんに怒られちゃった」と力なく呟いた翌日、体調がすぐれないと、お母さんはそれまで皆勤だった仕事を初めて休んだ。


その日から「頭が痛い」「胃がムカムカする」などと主張しては頻繁に遅刻、早退、欠勤を繰り返すようになってしまった。


また、その頃から、飲めなかったお酒に手を出すようにもなった。


おそらく現実から逃避する為だと思うけど。
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