ヤクザの家族になっちゃった!?


「和泉、どうしたんだ?」


心配そうにたづねてきた。


私は気づいたら、


龍之介さんの胸に飛び込んでた。


龍之介さんは少しキョドりながらも、


私を包み込むように抱き締めてくれた。



しばらくそのままでいたけど、


頭がだんだん冷静になっていくと


すごく恥ずかしくなってきた。


急にこんなことしたら、迷惑だよね。

好きでもない人に抱きつかれるのって、

嬉しいことではないもんね。


私は一言、ごめんなさい。

と謝って、

ゆっくり離れた。

龍之介さんは

いつも以上に優しく笑ってくれた。

でも、私の顔を見たあと、

少し切なそうな顔に変わり、

「お前、泣いてるのか?」


龍之介さんは私をもう一度抱き締めてそう言った


抱き締められたことの焦りと嬉しさと

泣いてたことに気づきて驚いたのと、

色々混ざりすぎちゃって、

困惑した。


けど、それ以上に胸が騒ぐ。

聞こえちゃうんじゃないかってぐらい。

ドクドクドクドクって。


私が黙ってると、

「なにがあった?」

そう、優しく聞いてくれた

私は昨日のこととか全部を話した。

自分がどれだけ情けないかも。


でも、龍之介さんは

すごく平然とした顔で言った。


「和泉は神様でもなんでもないんだから、

理解できないのは当たり前だろ」

って。


たしかにそうだ。

けど、

理解してあげたいと思ってしまう。


「理解してほしいと思うなら、

向こうから伝えに来るさ。

実際、大沢るりはお前にいいに来たんだろ?」

「はい…でも…」

「欲張らなくたっていい。

理解できないのは当たり前だ。

でもそこで、理解しようとしてくれるのは、

相手に必ず伝わるから。」


龍之介さんはそう言って私を抱き締める力を強めた。


そう言えば、

はじめてかもしれない。

こんなに龍之介さんの言葉を聞いたのは。

龍之介さんはきっと、私を励ましてくれたんだ。

無理に理解しようとするなって。

いつか必ず理解できる時が来るって。

伝えたいことは違うかもしれないけど、

私はそう受け取って、

龍之介さんに告げた。

少し話してくるから

ここで待っててくれないかって。



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