桜雨、ふわり。
私と彼とスケッチブック


ふわり ふわり

舞い落ちる桜の花びら。


それはまるで、この淡い恋心のようにとどまる事なく降ってくる。


手を差し出せば、すぐに触れる事の出来るそれは。
あの頃のあたし達のようだ。


今では手を伸ばしても届かない所へ行ってしまった、あたしの好きな人。






あたしが森崎くんに初めて会ったのは、高3の春だった。










「花奈ぁ、ごはん行こー」

教室の入り口で、あっこがお弁当箱を掲げた。


「あ、うん!今行くー」


そう声を上げて、席を立ったその時。
ふわり、と甘い香りが鼻先をくすぐった。

誘われるように顔を上げると、二階の教室の窓から見えるのは満開に咲き誇った桜の花だった。



4月。

もうすでに、満開を通り越した大きな桜の木は、優しい風にふわふわと可愛らしい花びらを飛ばしていた。


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