僕のonly princess


「じゃあ送って……」


「今度……送ってくれると嬉しい。今日は……ほら、薫くんが乗る電車、もうすぐ発車するよ!」


俺の言葉を遮るように『今度』と言った結花はぎこちなくて。
電光掲示板を指差しながら、俺の背中を押した。


「結花!?」


「薫くん、明日も会える?」


俺の背中を押す結花に慌てて声を掛けると、結花は話題を変えるように訊いてきた。


「明日?うん、会えるよ」


「ホント?嬉しい」


即答する俺に結花は本当に嬉しそうに笑って。
さっきのようなぎこちなさも儚さも消えていたから、俺はそれ以上深く考えるのをやめた。


優しい結花のことだから、本当に俺を待ってる理子ちゃんのために言ってるんだろうと思った。


本当はこの時、もっとちゃんと結花の様子に気付くべきだったんだ。


どうしてそんなにも俺が結花の家に行こうとすることを避けるのか。


それは大きなヒントだったのに。
結花が心の奥に閉じ込めている不安や悲しみをもっと早く知るための、大切なヒントだった……


だけど、何も知らない俺は、明日も結花に会えることが嬉しくて、呑気に笑っていた。


俺と同じように明日の約束を嬉しそうに楽しみにしている結花の笑顔の影にも気付かずに…―――――





「私も……強くならなきゃ」



ホームに続く階段を上る俺を見つめながら、結花が自分に言い聞かせるように呟いた言葉は俺の耳に届くことはなかった。



――Part.1 end――



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