僕のonly princess



夢を見ていた。


今までも何度も見た悪夢。
ここ最近は見なくなっていたのに。


あの人が……佐知が帰ってくると聞いたからだろう。


*********


夢の中の俺は中学2年生。


私立の中学に通う俺は特に興味を持てるものもなく、毎日暇を持て余していた。


勉強は特に頑張らなくても、学年で10番以内には入れる。
高校もそのままエスカレーター式で高等部へ上がるつもりだった。


親からもらった容姿のおかげで、何もしなくても女の子には注目された。
だけど俺のことをチヤホヤする女の子達には興味は持てなくて、適当に暇つぶしに遊ぶ程度。
人当たりはいい方だから、男友達とも問題なく過ごしているし、極々平凡に極々つまらない日々を過ごしていた。


そんな俺がただ一つ、執着しているものがあった。


5歳のあの日から、たった一つ……いや、たった一人、欲しくて堪らない人。


それが佐知だった。


佐知は俺の血の繋がらない義姉。


佐知の父親は俺の父親の兄で、元々俺達はいとこ同士だった。
だけど、俺が5歳で佐知が12歳の時に佐知の両親は交通事故で亡くなった。


両親を一度に亡くした佐知を俺の両親が養女として引き取ることになって、俺達はいとこから義姉弟になった。


いとこだった時から年の離れた佐知は俺に優しくて、会うといつも世話を焼いてくれた優しいお姉ちゃんだった。


『薫、今日からさっちゃんは薫の本当のお姉ちゃんになるんだよ』


だから父親にそう言われて、5歳児だった俺はただ単純に嬉しかったんだ。


佐知がお姉ちゃんになってくれるって。
最初は本当にそれが嬉しかった。


だけど、いつからだろう。
その『お姉ちゃん』というしがらみが邪魔だと思うようになったのは。


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