優しい人
部長
今日は、会社の飲み会。

全員参加の「夏の日デー」

とにかく我が社は催し事が多い
1次会が終わり、2次会に行こうかどうか迷っていると


「井上さん」名前を呼ばれて振り向く


そこにいたのは、総務部長の池沢さん
40歳手前、女子社員の噂にもよく上がる

独身貴族

整った眉、銀ブチ眼鏡の奥の切れ長な二重
少し薄目の唇
前髪はクセっ毛なのか、横に流している

そんな部長に声をかけられた


「あ、部長」


「少し付き合ってもらえませんか?」
と穏やかな顔で言う


「は、はい」どうしたのだろう?私、何かやらかしたのかな?

短大卒、入社2年目
私、井上美咲は驚いてしまった


「こっちに…」と促されるまま、店の裏の駐車場に行く


「乗って下さい」黒のセダン、助手席のドアを開けてくれた


「部長飲んでないんですか?」


「そうですよ、車ですからね」低めの甘い声で言う


車が走り出すと
「お酒、大丈夫ですか?」心配してくれる


確かに今日は、えらく飲まされたからだろう、見てたのかな?


「あ、大丈夫です」とは言ったものの、軽くふらつく位は酔っていた

でも、憧れの部長と2人きり
鼓動が速まる

静かな車内、肘置きに置かれた部長の腕
距離が近すぎる


しばらく走ると海岸線の橋の上
夜景が綺麗に見える

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