甘く熱いキスで
ユリアはずっと、そのためにライナーに向き合ってくれていたのに、ライナーは苦しみから逃げることだけを考えて一番大切な人を傷つけた。

それでもライナーを信じて追いかけてきてくれたユリアと、ライナーの子。この世界でたった2人……ライナーを必要としてくれる存在を守らなければいけない。

それが、ライナーの生きる意味だというのなら――

「く……はっ」

最後はほとんど溺れているのと変わらないようなもがき方で、ようやく砂浜へユリアを横たえる。まだ浅く水のある場所だが、とりあえず流される心配はなくなった。

寄せては返す波と一緒にユリアの柔らかな髪が水に揺れる。その横で片手をつき、呼吸を整えながら、ライナーは呪文を唱えた。

『……何だ?』

低く、ライナーからの連絡を訝しむ声が震える人差し指の先から聞こえてくる。

「ユリア、様が……っ、はっ、海に、落ちて……意識が……っ、エルマー、様に、伝え、て……くださっ……北国境、の――っ、く」

フッと炎が消える。まだ場所を正確に伝えていないのに、長時間冷たい海に浸かってしまった上に、呪文を使いながらユリアを抱えて泳いだ代償は大きい。

ライナーが連絡をしたのは精鋭部隊のリーダーだが、ユリアの名前を出したからエルマーには伝わるはずだ。そうすれば、ヴォルフやエルマーが探しにくるだろう。

それまで……
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