甘く熱いキスで

トライアングル

剣の交わる音と怒声、そんな緊張した空気の中でユリアは大きなあくびをして涙を滲ませた。

つまらない。

眠い。

ユリアの頭を占めているのは主にその2つの言葉だ。

ユリアが見学しているのは陸軍の早朝訓練である。昨夜ライナーと別れてからなかなか眠れず寝不足な上に、見たくもない訓練に引きずられてきたユリアの機嫌はすこぶる悪い。

まだ外が薄暗いうちにアルフォンスに叩き起こされたユリアは、ぼんやりしている間に彼に連れてこられた侍女に身支度を整えられ、今に至る。

当のアルフォンスは新人たちに混じって剣の稽古をしている。さすが幼い頃からエルマーに教えられてきただけあって、新人の中でも頭ひとつ抜き出ている印象だ。剣の使い方や動きに無駄がない。精鋭部隊ほど難易度の高い呪文は訓練内容に入っていないが、すべて完璧にクリアしていた。

「よーし、じゃ、少し休憩―」

ユリアがもう一度大きくあくびをしたとき、エルマーの掛け声が響いて剣の音が止んだ。それからすぐにアルフォンスが息を切らせて見学席へと上がってきて、ユリアの隣に座る。

「アル、私、もう帰っていい?」
「ダメだ!大体、ユリアはさっきからあくびばっかりで全然俺のことを見てくれてないだろ」

きちんとユリアの様子まで確認しているところが憎たらしい。

「こんな早い時間から起こされて眠くない方がおかしいわよ」

ユリアが唇を尖らせて抗議するが、アルフォンスもそれにムッとしたようで眉根を寄せる。
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