甘く熱いキスで
「距離を置いたら……変わることがあるの?」

なんとか絞り出した声は震えてしまったけれど、その代わりにしっかりと顔を上げてライナーを見据えた。

ライナーも少し表情は硬いものの、しっかりとユリアを見つめ返してくれる。

「あると、思っています。私の中の迷いが消えなければ……貴女にはこれ以上触れられません。これは私自身の問題です。覚悟をさせてください」

ユリアはライナーの言葉を噛み締めるように心の中で反芻した。

ユリアの気持ちを受け止めてくれる覚悟をしてくれる――それは、ユリアの都合の良い解釈なのかもしれない。けれど、毎日のようにライナーにアプローチしていた出会いからのことを考えると、ライナーがユリアと離れて気持ちの整理をする時間も必要なのかもしれないと思う。

「……わかったわ。でも、ライナーがヴィエント王国へ行く前にもう一度デートがしたい。いいでしょう?」
「わかりました」

ライナーが頷き、ユリアは微笑んだ。

まるっきり拒絶されているわけではないことが、それだけでとても嬉しい。こんな風にライナーの些細な一言で気分が浮き沈みしてしまう自分は、単純で……でも、今はそれでもいい。

ただ少しでも早く彼に近づきたいから……

それから2人は残りの昼食を食べ、ユリアは再び訓練に向かうライナーを見送った。
< 65 / 175 >

この作品をシェア

pagetop