緒方くんとあたし。
中学3年

10月






あたしの父はいわゆる囲碁指しというやつで、名人タイトル保持者だった。

笹原大吾と言えばその世界で知らない人はいない、と言われているほどだった。

けれど、その父はあたしが中3の1学期中に交通事故であっけなく世を去った。

一家の大黒柱を失ったおかあさんとあたしは途方にくれた。

そこへ、今の師匠、桜井新一氏があたしたち親子に手を差し延べてくれた。

桜井先生は父の友人でもあり良きライバルでもあったそうで、今回の訃報に一方ならぬ落胆をされて、そして一方ではあたしたち親子の心配をずっとしてくださった。

財産は父が遺してくれたものをきちんとすでに管理してもらえるよう手筈を整えて下さり、父の門下にいたお弟子さんたちは信頼の置ける先生方の所へと送ってくださった。










< 2 / 77 >

この作品をシェア

pagetop