守られるより守りたい!
その一言で、教室がシン…と静まった。
男子達はもちろん、お喋りをしていた女子達も静まる。
そんな中、一人の男子が苦笑いをしながら言った。
「なっ…、んだよ陵馬ぁ。お前、女の味方すんのかよ~」
その声で、他の男子達も周りを窺うように「そ、そうだぞ~」とか「お前男の敵になんのかよ~」とかなんとか言いだす。
だけど陵馬君は、キッとした目で男子を見て言った。
「味方とか、敵とかじゃねーだろ!お前らな、神澤がお前らにいろいろやられて、どんだけ嫌だと思ってるのかとか、ちょっとは考えた事あんのかよ!お前らだって、こういう事されたら嫌に決まってんだろ?そういう事を人にすんなよって言ってるんだよ!」
そう言いきった彼に対して、男子達は何も言えなかった。
女子達も陵馬君を見て、びっくりするように見るだけだった。
「…皆ぁ?どうしたの…かな?」
その時担任の先生が、そろぉ~っとドアを開けて入ってきた。
「なんでもないです」
陵馬君がそう言うと、男子達も「な!なんでもないです!」とか言いだす。
「そう?ならいいんだけど…って!亜稀ちゃんどうしたの!?」
ぽろぽろと涙を流すあたしに、先生は驚いたように駆け寄ってくる。
先生は何も知らない。先生の前では、男子達も大人しい。先生は怒ると怖いから。
あたしも先生の前で泣くのは初めてだから、先生はそりゃぁびっくりだろう。
「…なんでも…、ないです」
そういうと先生は「そう?大丈夫なの?」と聞いたから、あたしは「はい」と短く答えた。
すると先生は「わかったわ」と言って、教卓へ戻っていく。
先生は優しい。信じてくれる。追及したりしない。
「はいはい、じゃぁ朝の会を始めますよ!」
先生が明るい声で、ぱんぱんと手を叩きながらそう言う。
あたしへの嫌がらせが、終わった日の朝の事だった。