ねぇ、先生。


美術の授業をとってない俺からしてみれば、美術室なんて全く縁がない場所で。

それでも咲良が頻繁に来てる場所って思えば何だって愛おしく思えた。


―コンコン…

ノックをすれば、中から誰ー?なんて声が聞こえてきた。

そうか。美術部が使ってんじゃん。


ドアが開いて、顔を覗かせた美術部員が「何ですか?」なんて聞いてくる。

「篠原先生いる?」

コクンと頷いて、振り返った女の子が先生を呼ぶと、こっちを向いた先生とバッチリ目が合った。


「先生、ちょっといいっすか」

「うん。川上さん、あと10分したら片付け始めてて。」

さっき先生を呼んだ女の子に向かってそう言うと、美術室から出てきてドアを閉めた。


「珍しいね、俺に用事って。何?」

ムカつくくらいにマイペースで、俺がこんなに険しい顔をしてるのにこの人は全く動じない。

俺がこれから話すことが分かってるみたいに、美術室から離れた。

その後を続いて歩く。
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