ねぇ、先生。
「自分以外の男に好きな女が汚されていくの黙って見てるわけにはいかなかったんじゃないですか、篠原先生。」
こいつ特有の柔らかい笑顔が今日は一度も出てない。こんな風にずっと不機嫌なのは初めてだった。
あまり怒らない蓮がこんなにも不機嫌になる理由には、いつだってあの子が関わってた。
「だって考えてみ。お前以外の男にあの子が汚されんの。もうムカつくとかのレベルじゃねーでしょ。」
あ、想像もしたくないって?
目の前に置かれた酒を呑んで、眉間にシワを寄せた。酒強くないんだよな。
「…俺ほんとは触られてんの見るのも嫌だよ。特に茉央ちゃんのこと好きなやつなら尚更。触んなって言いそうになる」
「お前独占欲強いね」
知らなかった。これだけ一緒にいんのに、初めて見た一面だった。
「…だってやっと手に入ったんだ、俺だけのものにしたくなるじゃん」
こんなにベラベラ喋んのは、多分酒が回ってるからだ。弱いのに無理して呑んでるからだよ、バーカ。
「…抱きしめんのも、頭撫でんのも、俺のだって実感したいから。」
「お前のじゃん、今は。」