ねぇ、先生。
でもそれも、あたしだけが知ってればいいの。みんなは知らなくていい。
笑顔が可愛くて、カッコ良くて、優しくて、オマケに学歴までいいって知られたらまた人気になっちゃう。
これ以上人気にならなくていいの。
「この絵、茉央ちゃんが卒業するまでに完成するかな?」
「えっ、しないの?」
「どうだろうね、こんなにゆっくり描いたの初めてだから。」
こんなに大きなキャンバスで、こんなにゆっくり描いてたら確かにあたしが卒業するまでに完成しないかもしれない。
あと7ヶ月。
そう言えばまだまだ時間はあるように思うけど、先生だってずっとこの絵を描いてられるわけじゃない。
もし完成しなかったらどうしよう。
「あと何ヶ月?」
「7ヶ月。」
「そっか、短いね。」
「うん、短い。」