ねぇ、先生。

「咲良、聞いてる?」

「えっ…あ、ごめん…」

シロの説明をキチンと聞いてなくて、呆れたシロにコツンと頭を小突かれた。

「説明してんだからちゃんと聞けよなー」

「ごめん、ボーッとしてた」


ガヤガヤとしていた教室からは少しずつ人が減っていく。それぞれ塾に行ったり、家で勉強するために帰ったり。

人が減ったから自然と先生の声もよく聞こえるようになって、女の子と話してるだけで胸が痛む。

これって重症だ。

前はこんなことなかったのに、あたし最近すごく欲張りになった。


「あ、俺もう行かないと。」

先生のそんな声が聞こえて、なぜかホッとした。女の子との話し声を聞かなくて済むからかな。

美術部の活動がある日だからだろう。先生は少し焦ったように教室を出て行った。

人気なのは元々だけど、やっぱりあの体育祭での一件で更にそれが増したように思える。

それがすごく嫌だった。

< 309 / 451 >

この作品をシェア

pagetop