ねぇ、先生。
「先生、あのね…」
「何?」
こっちを見ようとしない先生。
さっきのあたしとまるで立場が逆転してしまったみたい。どうにかこっちを向かせたくて、先生の手をキュッと掴んだ。
絵の具で汚れてるけど、あたしにとってはすごく綺麗な手。素敵な絵を描く、あたしの大好きな手。
「…んふふ、まーたそんな顔してー。先生のこと誘惑してんの?」
先生が冗談を言ってるときの癖。
自分のことを″先生″って言うんだ。
この際あたしが今どんな顔をしてたっていい。ちゃんと目を見て話を聞いてくれるなら、いいんだ。
「帰したくなくなっちゃうなぁ。」
ふにゃんと笑った先生。
…どうして、今そんなこと言うの?
「…帰さなくていいよ。」
上手く話をはぐらかそうとする先生に涙が出そうになって、口から必死に出した言葉はとんでもない意味を持ってた。