ねぇ、先生。

「あたし、卒業式の日にちゃんと先生と話してくるから」

あの日から、加地くんと先生の話をするのは初めてだった。

お互いに気を使って話題に出さなかったからかもしれない。先生の話はどんな会話にも出てこなかった。

加地くんは驚いたように立ち止まって、あたしの手首を掴んだ。


「…戻って来るんだよな?」

不安気に揺れる目が、加地くんの気持ちを表してた。

もしもあたしが加地くんのところに戻ってこなかったらって、きっとそんなことを考えてるんだろう。

すぐにハッキリと頷けないのは、あたしもどこか迷っているから。

「俺、信じて待ってていいよな?」


無理やり閉じ込めようとしてる気持ちが、先生に会って、話して、溢れて出てこないだろうか。

消えるものじゃない。

きっとこの気持ちは一生、何があったってなくならないものだから。

問題はそれをしまい込んだまま先生と話して、終わらせられるかってこと。
< 428 / 451 >

この作品をシェア

pagetop