【完】切ないよ、仇野君
「それよかちー、話って何ね?」


「私の話よか雅美が先やろ。先に誘ったん雅美やし」


私も注文したドリアにスプーンを入れて雅美の方に向き直る。


「あんな、非常に言いにくかとばってん……」


「どやんしたと?」


雅美が言葉を濁すのは珍しい。目の前でもじもじする雅美は、まるでいつもの私みたい。


「あんな……実は、その。昨日から、さ。シノっちと付き合うことになってん」


そして、ようやく言葉にしたそれに、私は飲み込みかけていたドリアを詰まらせむせた。


「ごっ……!え、マジ?」


「うん。ちーがつい最近まで好きやった人やのに、ごめんなぁ」


雅美は心底申し訳無さそうに眉毛をさげて、お預けを食らった犬のようにプルプルと震えている。


クラスメイトでハンドボール部の篠田君。確かに、二年生に上がった時までは彼のことを好きだったけど、告白する前に失恋したっけ。


そんなに前のことじゃないのに、泰ちゃんを好きになって、バスケ部のマネージャーをするようになってから、全然気にならなくなっていた。
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