【完】切ないよ、仇野君
「へん!去年の俺と一緒にすんなし!」


「そーだね、悪かったよケイ先輩。去年のザコタ先輩は何処へやら」


「テメェまだそんネタ引っ張るんか!迫田じゃ!サ、コ、ダ!」


いつも通り生意気な小鳥遊に対し、相手の、多分先輩であろう人は大声で怒鳴っている。


言い合いなんだけど、何だかとてつもない信頼関係を感じる。


そんな二人の会話を掻き消すように、今度は反対側のコートから神楽木先輩の声が響いた。


「オラオラァ!一本頂きじゃあ!」


近寄りがたい程のスピードと迫力のあるドリブルで、ゴールまでまっしぐらに走っていく神楽木先輩は、ゴールの近くまで辿り着くと、その白い脹ら脛に筋を幾本も巡らせて、飛び上がる。


「スッゴ……何あれ!」


「行雲は部内一番の跳躍力を持っとるけん、パワーのあるゴール下からのオフェンスが得意ったい。……ばってん」


何も分からない私に、簡単な解説を入れてくれる由貴先輩の言葉は、そこで遮られた。


だって…………だって。
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