【完】切ないよ、仇野君
「ねぇちーちゃん、一緒に見てみたくなか?あいつらと、てっぺん」


その光景に釘づけになっていた私に話しかけた由貴先輩は、やはり向日葵が咲くようにニッコリと笑っている。


答えなんか、ひとつしか浮かばなかった。きっと、由貴先輩も私の答えがひとつしか無いことを悟っていた。


「はい……私で力になれるんやったら、一緒に、見たかです」


「よろしい!……皆ー!集合!新しい仲間ば紹介すっばい!」


私の答えに満足げに頷いた由貴先輩は、大きな声をフロア中に響き渡らせ、部員の皆を呼ぶ。


その声に、仇野君が私の方を見て、穏やかに柔らかく微笑んだ。


失恋して数時間。私はバスケ部のマネージャーとしての新たな一歩を踏み出す。


そして、心の何処かにあった、仇野君への恋の予感を膨らませた硝子のビードロが、細い入口から強く吹き込まれた新しい風と共に、音を立てて割れた。
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