【完】切ないよ、仇野君
「あいつらに緊張感なんて求めたらいかん。なんせ、インハイでんウィンターカップの時すら、緊張感皆無やったよ?」


あはは、と由貴先輩が呑気に笑いドリンクキーパーをベンチに置いた。


「由貴ィィィ!ちょい来い!収拾着かんけんお前がジャッジせれ!」


「はいはーい!」


噂をしてれば、白熱する討論に痺れを切らしたらケイ先輩が大きな声で由貴先輩を手招きする。


それに呆れたように返事をした由貴先輩は、やれやれ、と肩を竦めて走っていく。


「ちー!ちーもお菓子食べに来んねー!」


「え、うん!」


私も私で、パウンドケーキ片手に笑顔で手を振る泰ちゃんに返事をして、そちらへ向かった。


「ホントキモいッスわ椿先輩。何なん、こん無駄な女子力」


到着すると、雫ちゃんがこちらも椿特製の抹茶クッキーを食べながらモゴモゴ呟いている。


人は分からないというか、何というか。


椿の趣味はお菓子作りと裁縫と手芸らしく、定期的にバスケ部に手作りお菓子の差し入れが大量に入る。


「今日は最近椿が作るんにハマッとるパンもあるばい。ちー、あんこ好きか?」


「す、好き。頂きます」


泰ちゃんに差し出されたよもぎパンを千切って食べれば……よもぎとあんこの香りが絶妙過ぎて、思わず一歩後退してしまう。


趣味のレベルではない。最早、椿の作るものはお店を出せる程に絶品だ。
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