【完】女優橘遥の憂鬱
 「悪いが、君の元カノのことは調べさせてもらった」


「えっ!? ヌードモデルだった彼女ですか?」


「いや、悪いとは思ったんだが……。今一信用出来なくて。どうしても、あの映像が頭にこびり付いていたからね」


「そうですね。本当に馬鹿なことをしてしまいました」


「でも娘は言っていたよ。あれがあったから耐えて来られたと。君、物凄く上手だったそうだね」


「彼女そんなこと言ったのですか?」


「いや、娘は君をフォローするのに必死だったんだよ。それだけ、君のことが好きなようだ」


「すいません。こんな馬鹿な奴が許嫁で……」


「その人から聞いたよ。君が監督の恋人と同棲していた経緯を」


「えっ!? 彼女は監督の恋人だったんですか?」


「らしいね。監督とは取材で知り合ったようだ。でも彼女は本気で君を愛してしまったらしい」


「本気で俺を……なら、なんで監督の仕事を俺にやらせたんだ?」


「監督に言われたそうだよ。後腐れのない娘の撮影だからって」


「後腐れか。あの後、俺は一気に冷めてました」


「本当だな。私の娘に対して、後腐れが無いなんてな。奴はきっと事務所で娘の書類を見つけた時、指折り数えたと思う。そして、知ったんだ。プロポーズした日に二人が結ばれた事実を……。だから、頭に血が上ったんだ」


「そうかも知れませんね……って。えっ―!?」


「いや、冗談だ」
社長は照れ草そうに笑った。


「君が監督に脅されているとは知らなかったそうだよ」


「俺は彼女を裏切ってしまいました。でも彼女は橘遥さんが、処女で、全員に遣られることを知っていたのです。それが許せなかった。勿論、俺が一番悪いのですが……」


「彼女はきっと、報道カメラマンとしての道が約束されたと思っていたのではないかな?」




 『まだチェリーボーイなんだってね? だったらそれにサヨナラしない?』

薄暗い大きめの個室で鏡越しにウィンクをされた。


『時間無いんでしょ? いきなりでいいよ。ホラもう、大きくなってる』

急かされるままに挿入させた、あの時の行為がよみがえる。


俺達はあの後、恋人同士となり同棲を始めていたのだ。


俺はヌードモデルの彼女から女性の扱い方法を伝授された。

それはきっと、自分だけを愛して欲しいとのメッセージだったのかも知れない。


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