【完】女優橘遥の憂鬱
 「トイレに行くために急いでいたら、障害者用の扉が突然開いたんだ。俺はただ驚いて動けなくなってた。そしたらいきなり引き摺り込まれて、『早く出して』って言われたんだ」


「えっ、ずいぶん大胆な人だね」


「そうなんだよ。慌てていたら、『馬鹿ね。オシッコよ』って言うんだ。だから俺は、尿道を開放したよ。もう限界だったからね」


「でも、待ち伏せしてまで遣りたいことと言ったら一つだな」


「普通そうだよね。手洗いが終わった後で、彼女は俺の股間を擦ってた。その時『まだチェリーボーイなんだってね?』って言われたんだ」


「チェリーボーイ!?」


「その本当の意味も知らずに頷いたら、『だったらそれにサヨナラナラしない? 今此処で』って彼女は鏡越しにウィンクした」


「そりゃー、戸惑っただろう?」


「うん。俺が童貞だってこと噂で知って……、急に遣りたくなったらしいんだ」




 頭の中で整理する。
又バカなことを言ってしまわないように……


「その後で『時間無いんでしょ? いきなりでいいよ。ホラもう、大きくなってる』彼女はそう言いながら、俺の股間を彼女の局部に近付けた。俺は彼女に急かされるままにそれを挿入させたてしまったんだ」


「遣っちまったか……」


「ああ遣っちまってた。彼女言ってた。『あぁ、思った通りだった。若いからビンビンきてるの感じる。凄いわー。ねえ、私の恋人にならない』っていきなり言われて面食らったけど、俺は鏡越しに頷いていた」


「交渉成立か?」


「ああ、だから俺……。優柔不断がも知れないけど彼女と同棲を始めたんだ。でも、あの行為の後で気が付いた。俺の股間にゴム制の物が掛かっていることに」


「ゴム製品? 彼女、積極的な割りに賢い人だな」


「『スキンって言うの。スキンシップのスキン。だからさっきのあれもスキンシップなのよ。私と遣る時は必ず付けてね。病気を移さないためよ』彼女はそう言って、何食わない顔で障害者用のトイレから出て行ったよ」




 「ところで、彼女一体何者?」


「彼女は俺の通っていた映像の専門学校でヌードモデルをしていて、監督とも交流があったらしいんだ」


「もしかしたら、何日もトイレでずっと君を待っていたのかな?」


「どうして?」


「だって其処の専門学校は彼女の仕事場でしょ?」


「そうだけど……」




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